2026.10.12組織づくり

心理的安全性がぬるま湯になる理由と、成長する職場との違い

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心理的安全性がぬるま湯になる理由と、成長する職場との違い

心理的安全性を高めようと、話しやすい雰囲気づくりや1on1に取り組んできた。ところが、職場は和やかになった一方で、緊張感がなくなり、ぬるま湯のようになってしまった。そう感じている社長や管理職の方は少なくありません。

この記事では、心理的安全性の本来の意味を確認したうえで、ぬるま湯になってしまう理由と、成長する職場との違いを整理します。そのうえで、InsideSparkが安心して話せる場と高い基準をどう両立させているかを紹介します。

心理的安全性とは

心理的安全性とは、チームの中で、対人関係のリスクをとっても大丈夫だと思える状態のことです。ハーバード・ビジネス・スクールのエドモンドソン氏が、1999年の論文で「チームは対人関係のリスクをとっても安全な場所だ、とメンバーが共有している思い」と定義しました。

対人関係のリスクとは、質問をする、ミスを報告する、助けを求める、反対意見を言う、といった行動です。どれも、言ったことで「無能だと思われるかもしれない」「嫌われるかもしれない」というおそれがつきまといます。

この言葉が広く知られたきっかけは、Googleの社内調査「プロジェクト・アリストテレス」です。180のチームを調べた結果、成果を出すチームに共通する5つの要素の中で、心理的安全性が最も重要だったと報告されています。

ここで押さえておきたいのは、心理的安全性は「仲が良いこと」や「優しいこと」ではないという点です。エドモンドソン氏自身も、著書『恐れのない組織』の中で、心理的安全性はただ感じよく振る舞うことではなく、仕事の基準を下げることでもないと説明しています。

InsideSparkでは、心理的安全性を次のように捉えています。反対意見を言っても受け入れられ、そこから議論が始まる状態。反対意見を控えるようになった職場は、どれだけ雰囲気が良くても、心理的安全性が高いとは言えません。

ぬるま湯は「安全性は高いが、基準が低い」状態

エドモンドソン氏は、心理的安全性と仕事の基準の高さを組み合わせて、職場を4つの状態に分けています。

・心理的安全性が低く、基準も低い:無関心
・心理的安全性が高く、基準が低い:快適(ぬるま湯)
・心理的安全性が低く、基準が高い:不安
・心理的安全性が高く、基準も高い:学習

ぬるま湯は、この中の「心理的安全性は高いが、基準が低い」状態にあたります。居心地は良く、人間関係のストレスも少ない。ただ、求められる水準が低いので、議論してまで仕事を良くする理由がありません。居心地を壊さないことが優先され、反対意見も自然と控えられていきます。

つまり、ぬるま湯になったのは、心理的安全性を高めたからではありません。高めた安全性に、高い基準が伴っていなかったからです。

だからといって、心理的安全性を下げればいいわけではありません。安全性が低いまま基準だけを上げると、職場は「不安」の状態に移ります。

基準が高いだけの職場は、不安で動く

僕自身、この「不安」の状態の職場を、管理する側としてつくっていた時期があります。

営業のマネージャーをしていた頃、チームに求める基準は高く、数字のミーティングでは「で、どうするの」としか言わずに相手を詰める管理型でした。反対意見が出ることはありませんでした。立場が上の人の言うことが絶対だったからです。

基準の高さそのものは悪くありません。問題は、基準を上げる前に、言っても大丈夫だという土台がなかったことです。高い基準と心理的安全性は、どちらかを選ぶものではなく、両方そろって初めて「学習」の状態になります。

心理的安全性は、トップと管理職の振る舞いで変わる

心理的安全性は、制度や研修だけでは決まりません。毎日の場面で、トップや管理職がどう振る舞うかで決まります。

以前関わった組織で、心理的安全性が高まり、その後に下がっていくのを見たことがあります。

高かった時期のトップと管理職は、高い基準を置いたうえで、挑戦した人を称賛していました。そして、反対意見が出たときに感情的になることはなく、自分と逆の意見でも面白がって聞いていました。

その後、人が入れ替わったことをきっかけに、組織の空気は目に見えて変わりました。社員の振る舞いに表れたのは、諦めと答え探しです。言っても変わらないと諦め、上の人が求めている正解を探すようになりました。

関連:当事者意識とは?「自分ごと」にならない部下が変わる条件

驚いたのはトップや管理職の考え方が、そのまま組織の文化になったことです。

心理的安全性は、一度高めれば続くものではありません。上に立つ人の振る舞いで、良くも悪くも変わります。部下が上司の求める正解を探し始めると、1on1も形だけになっていきます。その構造は、1on1が意味ないと感じる本当の理由と、機能させる3つの条件にまとめました。

InsideSparkは、安全な場と高い基準をどう両立させているか

InsideSparkでは、安心して話せる場と、高い基準の両方を用意しています。

安全な場:評価と切り離す

受講者は毎日、AIコーチング(ウチガワ)で自分の考えや悩みを言葉にして内省します。この内容は社内に公開されません。毎月のグロース・ガイド面談で話す相手も、評価者ではないコーチです。評価と切り離されているから、うまくいかなかったことや迷いも話せます。

高い基準:本人が決めた「なりたい姿」に置く

基準は、会社や上司が上から渡すものだけではありません。InsideSparkでは、受講者が初月に決めた「1年後のなりたい姿」を基準にしています。なりたい姿の聞き方は、フィードフォワードとは?フィードバックとの違いと部下育成での使い方で紹介しています。

面談で関わっていると、受講者の選択が楽な方に寄っていると感じることもあります。

その時コーチは「楽をしていませんか」とは言いません。まず「今回、なぜその選択をしたのか」を聞きます。そのうえで、「その選択は、中長期でなりたい姿につながっていますか」と確認します。

たいていの場合、受講者はここで自分から気づきます。基準を外から押しつけるのではなく、本人が決めた基準に照らしてもらうのです。

別の視点を、整理して返す

面談では、コーチが受講者の考えをそのまま受け取るだけではありません。

考えの幅を広げるために別の視点を伝え、受講者が話した内容を整理して、これまでと違う見方になっていれば、その変化を言葉にする手伝いをします。

上司と一緒に支える

月1回の上司報告会では、上司の方に、受講者を鼓舞する関わりをお願いしています。報告会の場に限らず、上司の方とも話をしながら、受講者の成長を一緒に支えています。

この記事のFAQ

心理的安全性を高めると、厳しいことを言えなくなりませんか?

言えなくなるわけではありません。エドモンドソン氏も、心理的安全性は基準を下げることではないとしています。ただし、伝え方には工夫が必要です。「君は詰めが甘い」と人に向けて言うと、相手は自分を守ることに意識を向けます。「提案書を出す前の確認が一回少なかった」と行動に向けて伝えれば、厳しい内容でも次の改善につながります。伝え方については、フィードバックとは?部下の評価面談で逆効果にならない伝え方で詳しく書いています。

自社の心理的安全性は、どうやって確かめればいいですか?

エドモンドソン氏は1999年の研究で、7つの質問で心理的安全性を測っています。たとえば「このチームでミスをすると、責められることが多い」「このチームでは、問題や難しい課題を話題にできる」「このチームのメンバーに助けを求めるのは難しい」といった項目です。

まずは日常の場面で確かめることもできます。会議で、上の立場の人と違う意見が最後に出たのはいつか。ミスの報告が、起きてからどれくらいで上がってくるか。この2つを振り返るだけでも、自社の状態が見えてきます。

まとめ

・心理的安全性は「仲の良さ」ではなく、反対意見を言っても受け入れられ、議論になる状態
・ぬるま湯は、安全性が高すぎるのではなく、基準が低い状態。安全性を下げるのではなく、基準を上げる
・基準だけを上げると、職場は不安で動くようになる。高い基準と心理的安全性は両方そろえる
・心理的安全性は、トップと管理職の振る舞いで変わる。反対意見を面白がって聞けるかが分かれ目になる
・基準は上から渡すだけでなく、本人が決めた「なりたい姿」に置くと、押しつけにならずに保てる

正直に言うと、管理型のマネージャーだった頃の僕は、厳しく感情的に指導することだけが基準を高めると誤解していました。気がつけば現場は萎縮し、挑戦することを忘れて、ミスをしないことだけを繰り返すようになっていました。その結果、基準は停滞するどころか、下がっていました。

基準を高めることと、言っても大丈夫だと思える安全性は、どちらかを選ぶものではなく両輪です。片方だけを回しても、組織は前に進みません。

組織づくりや部下の育て方に迷ったら、無料の個別相談会でお気軽にご相談ください。

出典
・Edmondson, A. (1999). Psychological safety and learning behavior in work teams. Administrative Science Quarterly, 44(2), 350–383.
・Edmondson, A. C. (2008). The competitive imperative of learning. Harvard Business Review, 86(7-8), 60–67.
・エイミー・C・エドモンドソン『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』英治出版(2021年)
・Google re:Work「Guide: Understand team effectiveness」 https://rework.withgoogle.com/intl/en/guides/understand-team-effectiveness

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