社員の育成を、社内でやるべきか、外部に任せるべきか。
外部の研修は費用がかかるので、教育担当を一人採用して内製化した方がいいのではないか。
そう考えて、判断に迷っている社長の方は少なくありません。
この記事では、研修の内製化と外注の意味と、人材育成で多くの会社がつまずいているところをデータで確認します。その上で社内で育てた方がいいことと、外に任せた方がいいことの分かれ目、そして両方の組み合わせ方を整理します。
研修の内製化と外注とは
研修の内製化とは、社員の研修を自社の社員が企画し、自社で教えることです。研修の外注とは、研修の企画や実施を、研修会社など外部の専門家に任せることです。
ただ実際には多くの会社が、どちらか一方ではなく両方を使っています。
厚生労働省の「令和7年度 能力開発基本調査」によると、正社員向けの研修(職場を離れて行う研修、OFF-JT)を実施した事業所のうち、自社で実施したのは76.4%、民間の研修会社などを使ったのは41.4%でした(複数回答)。
つまり、考えるべきは「内製か外注か」の二択ではありません。
何を社内で教え、何を外に任せるか、という線引きです。
人材育成でつまずいているのは「教える人」と「時間」
同じ調査では、人材育成に何らかの問題があると答えた事業所が80.1%にのぼります。問題の内容で多かったのは、次のとおりです。
・指導する人材が不足している:59.5%
・人材を育成しても辞めてしまう:51.6%
・人材育成を行う時間がない:45.5%
一方で、「人材育成の方法がわからない」は10.0%にとどまっています。
多くの会社は、育て方が分からないのではなく、教える人と時間が足りていないということです。
特に売上が数億円規模の中小企業では、売上を伸ばすことが優先され、育成にまで手が回らないのが正直なところです。
そして手が回らないまま社内だけで育成を回そうとすると、次のような問題が起こります。
社内だけで回す育成が、形だけになる理由
僕は以前、ベンチャー企業で人材開発を担当していました。社内で研修やOJTを回す中で、2つの問題に突き当たりました。
①研修が定型化され、「研修ができる人」が増える
一つは、研修の定型化です。
研修を担当者に割り振ってタスクにし、誰が教えても同じ内容が伝わるように、再現性を目的に型をつくっていきました。
その結果、研修からライブ感がなくなりました。相手の理解に合わせて伝え方を変えることもなくなり、型どおりに研修を進められる「研修ができる人」ができあがる。
行われるのは、形式的な研修だけになっていきました。
②OJTが、教える人の都合に寄っていく
もう一つは、一つ目とは逆の問題です。
OJTでは、教える人が評価者を兼ねていることが多くあります。すると、その人のやり方や、自分が管理しやすいやり方で教えることになり、育成の本来の目的からずれていきます。
評価者との1対1で起きやすいことは、1on1が意味ないと感じる本当の理由と、機能させる3つの条件でも触れています。
専門部署をつくっても、土台がなければ続かない
この2つの問題が解消できたのは、ミッションなどの会社の考え方から基礎知識まで、すべての研修の管理を専門とする部署を立ち上げたときだけでした。ただその部署も、最終的には廃部になりました。
「学ぶ」ということ自体の意味づけも定義もないまま、環境だけがつくられ、従業員にも浸透していなかったからです。教える仕組みをつくっても、学ぶ側に学びの楽しさや実体験といった土台がなければ、育成は続きませんでした。
社内で育てた方がいいこと、外に任せた方がいいこと
中小企業を前提に考えると、InsideSparkでは、線引きを次のように考えています。
・社内で教えること:自社の業務知識、仕事のやり方、部署や職種ごとの専門知識と経験
・外に任せること:学び方の土台、評価者ではない第三者による伴走
業務知識や仕事のやり方は、その会社にしかないものです。外部の研修会社が、社内の先輩より上手に教えることはできません。
一方で、学び方の土台は、どの業務にも共通する力です。
そして評価者ではない第三者だからこそ、本音で話せて教える人の都合に寄らない育成ができます。
社内の評価者が担うと、先ほどのOJTのずれが起きやすいところです。
「教育担当を採用すれば内製化できる」で見落としがちなこと
教育担当を一人採用すれば、内製化できる。そう考える社長の方もいると思います。
ただ一人に任せた育成は、結局その人に属人化します。
その人が退職すれば、育成の進め方ごと会社から消えてしまいます。教える人を一人置くことと、会社として育成の仕組みを持つことは、別のことです。
専門部署をつくり、数年かけて仕組みを育て、時代の変化に合わせて教え方をアップデートし続けられるのであれば、内製化は十分に選択肢になります。それだけの体制を持てない場合は、切り分けて任せた方が社内は本業に集中できます。
外部に任せることには、もう一つ利点があります。ほかの会社の失敗例や成功例を聞けることです。自社の中だけでは見えない比較の材料が手に入ります。
InsideSparkは、社内の育成の土台を担う
InsideSparkは、次期リーダー候補の中堅社員に1年間伴走する自律型人材育成プログラムです。
業務知識は教えません。
教えるのは、自ら学び、考え、計画し、実行し、内省するという、学び方の土台です。
受講企業では、土台となる部分をInsideSparkが担い、部署や職種に関わる専門知識や経験は社内で教える、という分担をしています。土台が鍛えられることで、社内で教わる専門知識や経験の身につき方が速くなっていきます。
研修で学んだことが現場で使われるまでの流れは、研修転移とは?学びが現場で使われない構造的な理由で詳しく書いています。
この記事のFAQ
外に任せると、社内にノウハウが残らないのではありませんか?
InsideSparkの受講後に社内に残るのは、研修の手順書ではなく、自律型人材です。
内製化と違い、教え方のノウハウを社内にためることを目的にはしていません。学んだことを現場で使える人が育ち、その人が増えることでチームが変わり、会社が変わっていきます。
さらに受講者自身の失敗や成功を含めた体験談が、一次情報として社内に残ります。
育成で一番強いのは、こうした実際の経験談です。次に育つ人にとっても、使い続けられるノウハウになります。
まとめ
・研修は内製か外注かの二択ではない。何を社内で教え、何を外に任せるかの線引きで考える
・多くの会社がつまずいているのは、育て方ではなく、教える人と時間の不足
・社内だけで回すと、研修は定型化して形だけになり、OJTは教える人の都合に寄りやすい
・業務知識や仕事のやり方は社内で、学び方の土台と評価者ではない第三者の伴走は外に任せる
・教育担当を一人置くだけでは属人化する。内製化するなら、数年かけて仕組みを育て、更新し続ける体制が必要
正直に言うと、教える仕組みをつくることより学ぶ側の土台をつくることの方が、ずっと難しくずっと大事でした。
組織づくりや部下の育て方に迷ったら、無料の個別相談会でお気軽にご相談ください。
出典
・厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」の結果(2026年7月31日公表) https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00233.html
・同 調査結果の概要 https://www.mhlw.go.jp/content/11801500/001728125.pdf



