部下を育てることが大事なのは分かっている。
けれど自分も現場で数字を持っていて、じっくり教える時間が取れない。教えたことはやってくれるのに、それ以上には伸びていかない。
そんな悩みを抱えている社長や上司の方は少なくありません。
この記事では、部下の育て方で多くの会社がつまずいているところをデータで確認したうえで、InsideSparkが大切にしている育てる順番を紹介します。
各段階の詳しい関わり方は、関連する記事で掘り下げています。
部下の育て方で、多くの会社がつまずいているところ
産業能率大学総合研究所がHR総研と行った「ミドルマネジャーの人事実態調査2023」(企業の人事担当者331人が回答)によると、課長がプレイヤーとしての仕事から離れ、マネジメントに専念できている会社は2.1%でした。ほとんどの会社で、管理職は自分の数字を持ちながら部下を育てています。
同じ調査で、課長に強化してほしい能力の1位は「部下を育成する力」(66.5%)でした。2010年から毎年1位が続いています。
厚生労働省の「令和7年度 能力開発基本調査」でも、人材育成に問題があると答えた事業所で多かったのは、「指導する人材が不足している」(59.5%)と「人材育成を行う時間がない」(45.5%)でした。一方で、「人材育成の方法がわからない」は10.0%にとどまります。
育て方を知らないのではなく、限られた時間の中で何から手をつけるかが決まっていない。InsideSparkは、ここに部下の育成がうまく回らない原因があると考えています。
スキルより先に、興味の土台を見る
時間がないとき上司はつい、やり方から教えます。資料の作り方、商談の進め方、報告の仕方。すぐに使えて、教えた手応えもあるからです。
ところが資料の作り方を丁寧に教えても、次の資料は言われたとおりの形で出てくるだけ。それ以上には伸びていかない。そんな場面に心当たりがある方も多いと思います。
InsideSparkでは、スキルは加速剤で、土台は興味だと考えています。
スキルは、本人の中に「もっと知りたい」「こうなりたい」という土台があって初めて、伸びる速さを上げます。
土台がないまま渡したスキルは、言われた範囲で使われて止まります。
興味は、好きなことだけを指すわけではありません。「1年後にこうなっていたい」という姿も、「こうはなりたくない」という姿も、興味の入口になります。
InsideSparkの受講者に、こんな変化がありました。
その受講者は、これまでビジネスの発信者を「なんとなくすごい人」として見ていました。受講が始まってから、その発信を「自分の仕事に転用するには、どうすればいいか」という角度で見るようになりました。
見る角度が変わったことで、学ぶ姿勢が「やらなければ」から「やりたい」に変わりました。日々の仕事の進め方も、試しては確かめる実験として扱うようになりました。
同じ発信を見ていても、興味の土台があるかどうかで、そこから持ち帰るものが変わります。
部下を育てる3つの段階
では、興味の土台をどうつくり、どう伸ばしていくのか。InsideSparkでは、次の順番で関わります。
1つ目:向かう先を本人と決める
最初にするのは、やり方を教えることではなく、本人がどこに向かいたいのかを一緒に決めることです。
InsideSparkでは、1年後のなりたい姿を2つの方向から聞きます。会社や上司から求められている姿と、制約を外したときに本人がなりたい姿です。この2つを結ぶと、会社の期待が「やらされること」ではなく、本人の向かう先の一部になります。
なりたい姿の聞き方はフィードフォワードとは?フィードバックとの違いと部下育成での使い方、目標の決め方は目標設定理論とは?部下の目標は「決めさせる」より「理由」で変わるで紹介しています。
2つ目:判断基準を渡して、小さく任せる
向かう先が決まったら、仕事を任せます。このとき渡すのは作業の手順ではなく、判断の基準です。なぜそうするのかという背景と理由を伝えておくと、想定外のことが起きても部下は自分で考えて動けるようになります。
任せる範囲は小さくて構いません。大事なのは、最後まで本人にやり切ってもらうことです。上司が途中で手を出しすぎると、うまくいっても部下の自信になりません。
任せ方は権限委譲とは?業務ではなく判断基準を渡すと任せられる、やり切る経験が自信になる理由は自己効力感とは?部下の「できる」は褒め言葉では育たないで詳しく書いています。
3つ目:失敗を責めず、事実で振り返る
任せれば、うまくいかないこともあります。ここで上司が答えを出してしまうと、部下は次も上司の答えを待つようになります。
InsideSparkでは、ダメだった部分を悔やむ「反省」ではなく、何が起きたのかを客観的に見る「内省」を大切にしています。上司が投げかけるのは「なぜできなかったのか」ではなく、「今回、なぜその選択をしたのか」という問いです。責められない安心感があってこそ、部下は本当のことを話せます。
振り返り方は内省とは?研修をしても部下が変わらないのは、事実を観察していないからだった、責めずに伝える方法はフィードバックとは?部下の評価面談で逆効果にならない伝え方、本音を話せる職場の条件は心理的安全性がぬるま湯になる理由と、成長する職場との違いで紹介しています。
段階を飛ばすと、育成は止まる
3つの段階は、どれか1つを飛ばすと止まります。
- 向かう先がないまま任せると、仕事は「やらされること」のまま変わらない
- 判断基準を渡さないまま任せると、想定外が起きるたびに判断が上司に戻ってくる
- 振り返りがないまま任せ続けると、経験が次に生きない
指示がないと動けない部下がどう生まれるかは、指示待ちの部下が生まれる理由で整理しています。
InsideSparkは、基礎をしつこく教え込む
InsideSparkは、次期リーダー候補の中堅社員に1年間伴走する自律型人材育成プログラムです。
InsideSparkが教えているのは、最新の手法や目新しい理論ではありません。習慣化、ロジカルシンキング、クリティカルシンキングといった、昔から提唱されてきた基礎です。
時代が変わっても使える原理原則だからこそ、一度聞いて終わりにせずしつこく教え込みます。
教え込む過程は、次のように組み立てています。
・月1回、コーチが企業に伺い、基礎研修を行う
・研修の翌日から次の研修まで、毎日宿題に取り組む。宿題の型は1か月変わらず、題材にはその日に現場で起きた出来事を使う
・日報にコーチが返信し、「この場面なら、あの研修の内容が使える」と、学びと仕事をつなぐ
・毎月のグロース・ガイド面談で、受講者の選択の理由を聞き、考えを整理する
・月1回の上司報告会で研修の内容を上司と共有し、上司が日々の指導で同じ言葉を使えるようにする
同じ型を、毎日違う現場の出来事に当てはめ続ける。この繰り返しの中で、研修で聞いた基礎が、知識から仕事で使える力に変わっていきます。
外部の研修は上司が中身を知らないまま終わり、学んだことを職場で使う機会がないことがよくあります。上司報告会は、その切れ目をなくすためのものです。先ほどの3つの段階も、この1年間の中で何度も回っていきます。
この記事のFAQ
時間がないプレイングマネージャーでも、この順番で育てられますか?
はい。むしろ、時間がない上司ほど順番が効きます。最初の「向かう先を決める」は、一度じっくり話せば、その後の判断の軸になります。任せる範囲も、1日の動き方のような小さな単位からで構いません。
毎回の指導に時間をかけるより、最初に向かう先と判断の基準を渡しておく方が、あとで上司に戻ってくる相談は減っていきます。
興味がなさそうな部下には、どう関わればいいですか?
興味がないように見えても、ないのではなく本人の中で整理されていないだけのことがよくあります。InsideSparkでは、「なりたい姿がない」と言われたら、「では、1年後どうなっていたくないですか」と聞きます。
なりたくない姿から話してもらうと、本人が本当に大事にしていることが見えてきます。そこが、興味の入口になります。
まとめ
・多くの会社は、育て方を知らないのではなく、時間がない中で何から手をつけるかが決まっていない
・スキルは加速剤で、土台は興味。土台がないまま渡したスキルは、言われた範囲で止まる
・育てる順番は、向かう先を本人と決める→判断基準を渡して小さく任せる→失敗を責めずに事実で振り返る
・どれか1つを飛ばすと、育成は止まる
・興味が見えない部下には、「なりたくない姿」から聞く
部下の育て方に、近道はありません。けれど、順番を変えるだけで、同じ時間でも育ち方は変わります。教える量を増やすより先に、部下が何に向かいたいのかを知ること。InsideSparkが育成の最初に置いているのは、そこです。
部下の育て方や関わり方に迷ったら、無料の個別相談会でお気軽にご相談ください。
出典
・産業能率大学総合研究所、HR総研「ミドルマネジャーの人事実態調査2023」(2023年9月14日公表) https://kyodonewsprwire.jp/release/202309129480
・厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」の結果(2026年7月31日公表) https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00233.html



