2026.10.27研修・育成の選び方

経験学習モデルとは?経験しても育たない人に足りない振り返り

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経験学習モデルとは?経験しても育たない人に足りない振り返り

何年も現場で経験を積ませてきた。任せる仕事も少しずつ増やしてきた。それなのに、同じようなところでつまずき、同じような失敗を繰り返す。

「経験を積めば、そのうち育つ」と考えて任せてきた社長や上司の方ほど、この手応えのなさに迷うことがあると思います。

この記事では、経験から学ぶ流れを表した「経験学習モデル」の意味を確認し、経験を積んでも育たないときに、どこで止まっているのかを整理します。

そのうえで、InsideSparkが毎日の経験を学びに変えている仕組みを紹介します。

経験学習モデルとは

経験学習モデルとは、人が経験から学ぶ流れを、4つの段階の循環で表した考え方です。米国の教育理論家コルブ氏が、1984年の著書で示しました。

コルブ氏は、学習を「経験を変換することで、知識が生み出される過程」と定義しています。経験そのものではなく、経験をどう扱うかが学びを決める、という考え方です。

4つの段階は、次のとおりです。

  1. 具体的な経験:実際に仕事をして、何かが起きる
  2. 振り返る:何が起きたのかを、立ち止まって見つめ直す
  3. 教訓にする:振り返った内容から、「こういうときは、こうするとうまくいく」という自分なりの法則を引き出す
  4. 試す:その法則を、次の仕事で実際に使ってみる

試した結果がまた新しい経験になり、次の振り返りにつながります。コルブ氏は、4つすべてを回して初めて学びになるとしています。どの段階から入っても構いませんが、どこか1つが欠けると循環は止まります。

経験が力にならないとき、どこで止まっているのか

InsideSparkでは、経験を積んでも育たないとき、止まり方には主に3つあると考えています。

経験したまま、終わっている

忙しい現場では、1つの仕事が終わると、すぐ次の仕事が始まります。うまくいったのか、なぜうまくいったのかを考える前に、次に進んでしまう。経験の数は増えても、それぞれがやりっぱなしのまま積み重なっていきます。

振り返りが、反省で終わっている

振り返りはしている。けれど、出てくる言葉が「次は気をつけます」「もっと頑張ります」で終わる。これは振り返りではなく、反省です。何が起きたのかを見ないまま気持ちを入れ直しても、次に何を変えればいいのかが出てきません。教訓にする段階まで進めないのです。

事実を観察する振り返りの方法は、内省とは?研修をしても部下が変わらないのは、事実を観察していないからだったで詳しく書いています。

教訓を、上司が代わりに言っている

部下の振り返りを聞いた上司が、「つまり、こういうことだよ」と教訓をまとめてしまう。親切に見えて、ここで教訓は上司の言葉になります。部下にとっては「言われたこと」なので、少し違う場面になると使えません。

教訓は、本人が自分の言葉で引き出したときに、次に試せる形になります。

「やってきたこと」が「意図してやれること」に変わった受講者

InsideSparkの受講者に、こんな変化がありました。

その受講者は、これまで「事前準備が大事だ」と教わってきて、実際に準備もしていました。ただ、その準備がなぜ大事なのか?仕事のどこにどう効いているのか?は理解していませんでした。経験はあるのに、言われたからやっている状態です。

毎月のグロース・ガイド面談で、コーチは受講者の具体的な業務を例に取り上げました。この準備は仕事のどの場面に効いていたのか?受講者がやってきたことと、それが何に効いていたのかを、一つずつ一致させていきました。

すると受講者は、無意識にやっていたことを、意識してやれるようになりました。その結果、意図を持った行動を自分から起こせるようになりました。

経験学習モデルに当てはめると、この受講者は「具体的な経験」を十分に積んでいました。足りなかったのは、それを振り返り、自分の教訓にする段階です。そこがつながったことで、次の仕事で意図して試せるようになりました。

経験から学べる人に共通する3つの力

神戸大学の松尾睦氏は、著書『職場が生きる 人が育つ「経験学習」入門』(2011年)で、経験から学ぶ力を3つに整理しています。

  1. ストレッチ:自分の能力を少し超える仕事に挑戦する力
  2. リフレクション:行動の最中や後に自分のやり方を振り返り、周りからの意見も受け入れる力
  3. エンジョイメント:仕事の面白さに気づき、そこに意味を見いだす力

松尾氏は、これらの力の土台に、自分や周りへの「思い」と、成長を助ける人との「つながり」があるとしています。経験から学べるかどうかは、本人の資質だけで決まるわけではなく、挑戦できる仕事と、振り返りを支える関わりがあるかどうかにも左右されます。

InsideSparkは、毎日の経験を学びに変える

InsideSparkは、次期リーダー候補の中堅社員に1年間伴走する自律型人材育成プログラムです。InsideSparkでは、経験学習の4つの段階が、毎日の流れの中で回るようにしています。

・月1回の基礎研修で、考え方の基礎を学ぶ
・研修の翌日から次の研修まで、毎日宿題に取り組む。題材には、その日に現場で起きた出来事を使う
・日報にコーチが返信し、「この場面なら、あの研修の内容が使える」と、経験と学びを結びつける
・結びついた考え方を、翌日の仕事で試す
・毎月のグロース・ガイド面談で、受講者の選択の理由を聞き、振り返りを深める

現場の出来事が「経験」、宿題と日報が「振り返る」と「教訓にする」、翌日の仕事が「試す」にあたります。1日1回、小さく循環を回すことを1年間続けます。

研修で学んだことが現場で使われるまでの流れは、研修転移とは?学びが現場で使われない構造的な理由で、部下を育てる順番は、部下の育て方とは?育たない原因は教え方ではなく順番にあるで紹介しています。

この記事のFAQ

振り返る時間を取る余裕がありません。どうすればいいですか?

振り返りに、長い時間は必要ありません。大事なのは、一度にたくさん振り返ることより、毎日小さく回すことです。たとえば1日の終わりに、その日の出来事を1つだけ選び、「何が起きたか」「なぜそうなったか」「次はどうするか」を短く言葉にする。これだけでも、経験はやりっぱなしになりません。

上司が教訓を教えてあげた方が、早くないですか?

目の前の一件だけを見れば、その方が早く済みます。ただ、上司が言った教訓は、部下にとっては「言われたこと」のままです。似ているけれど少し違う場面に出会ったとき、自分で応用することができません。

上司が渡すのは答えではなく、「何が効いていたと思う?」「次に同じ場面が来たら、どうする?」という問いです。本人が自分の言葉で教訓を引き出すまで待つことが、遠回りに見えて、次の経験を力に変える近道になります。

まとめ

・経験学習モデルは、経験・振り返る・教訓にする・試すの4段階の循環。4つすべてを回して初めて学びになる
・経験を積んでも育たないときは、やりっぱなし、反省で終わる、教訓を上司が代わりに言う、のどこかで止まっている
・振り返りは、気持ちを入れ直す反省ではなく、何が起きたのかを見る内省で行う
・教訓は、本人の言葉で引き出したときに、次に試せる形になる
・振り返りは、長い時間より、毎日小さく回すことが効く

経験の量は、そのまま力の量にはなりません。力になるのは、経験のあとに何が効いていたのかを本人が言葉にできたときです。InsideSparkが毎日の宿題と日報を続けるのは、そのためです。

部下の育て方や関わり方に迷ったら、無料の個別相談会でお気軽にご相談ください。

出典
・Kolb, D. A. (1984). Experiential Learning: Experience as the Source of Learning and Development. Prentice Hall.
・松尾睦『職場が生きる 人が育つ「経験学習」入門』ダイヤモンド社(2011年) https://www.diamond.co.jp/book/9784478017296.html

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