2026.10.26部下・メンバーの育て方

自己効力感とは?部下の「できる」は褒め言葉では育たない

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自己効力感とは?部下の「できる」は褒め言葉では育たない

部下に自信を持ってほしくて、うまくいったときはしっかり褒めている。それなのに、少しつまずくと「自分には無理です」に戻ってしまう。そんな部下を前に、どう関わればいいのか迷っている社長や上司の方は少なくありません。

この記事では「この行動なら、自分にもできそうだ」という見通しを表す自己効力感の意味と、自信や自己肯定感との違いを整理します。

そのうえで、自己効力感が何から育つのかを、上司の関わりに置き換えて紹介します。

自己効力感とは

自己効力感とは、ある行動について「これなら、自分にもできそうだ」と思える見通しのことです。スタンフォード大学の心理学者バンデューラ氏が、1977年の論文で提唱しました。

バンデューラ氏は、2つの見通しを分けて考えました。

・結果の見通し:この行動をすれば、この結果になるだろう
・自分ができる見通し:その行動を、自分はやり遂げられそうだ

自己効力感は、後者を指します。

営業で考えると分かりやすくなります。訪問件数を増やせば、受注は増える。これは多くの営業担当者が分かっています。ところが、その件数を自分が毎日こなせそうだと思えなければ、行動は始まりません。始まっても、うまくいかない日が続くとやめてしまいます。

分かっているのに動けない部下に足りないのは、知識ではなくこの見通しです。

自信や自己肯定感との違い

自己効力感は、根拠のない自信とは違います。

「何でもできる」という漠然とした気分ではなく、「この仕事なら、ここまでできそうだ」という、具体的な行動についての見通しです。

そのため、自己効力感は仕事ごとに違います。

資料づくりならできそうだと思えるのに、お客様の前で話すとなると急に弱気になる。同じ人の中に、高いところと低いところがあるのが普通です。

自己肯定感は、自分という存在そのものへの感覚を表す言葉です。

InsideSparkでは、今の自分をありのままに受け入れる「自己受容」を出発点にし、その先に自己効力感が育つと考えています。2つの言葉の違いと、自己受容が自己効力感につながる理由は、自己受容とは?弱さを受け入れた人ほど成長する理由で詳しく書いています。

自己効力感が高ければ、成果は出るのか

研究では、自己効力感と仕事の成果には関係があることが示されています。米国の研究者スタイコビッチ氏とルーサンス氏は1998年、114の研究をまとめて分析し、自己効力感が高い人ほど「仕事の成果も高い傾向がはっきりと見られる」と報告しました。

ただし、これをそのまま「自信を持たせれば成果が出る」と受け取るのは危険です。ジャッジ氏らが2007年に行った分析では、本人の性格や知的能力・仕事の経験の影響を差し引くと、自己効力感だけで成果を見通せる度合いは小さくなりました。特に、複雑な仕事では、自己効力感から成果を見通すことはできませんでした。

自己効力感は、実際の力の裏付けとセットで育って初めて意味を持ちます。気持ちだけを先に持ち上げても、仕事の難しさにぶつかった瞬間に崩れます。では、裏付けのある自己効力感は何から育つのか。

自己効力感を育てる4つの源

バンデューラ氏は、自己効力感は4つの情報から形づくられるとしています。押さえておきたいのは、4つが同じ強さではないことです。

1つ目:自分でやり遂げた経験

4つの中で最も強いのが、実際にやってみてうまくいった経験です。成功は「できそうだ」という見通しを高め、失敗が続くと下げます。

ただし、バンデューラ氏は条件も書いています。成功が自己効力感を高めやすいのは、本人がそれを「自分の技能によるもの」と感じたときです。周りの助けが多いほど、本人は成功を外のおかげだと受け取ります。

上司の関わりに置き換えると、たとえばこういう場面です。部下が困っているのを見かねて、途中で手を出す。資料を直し、商談に同席して、最後は上司がまとめる。結果は成功です。でも部下の中に残るのは「上司がいたからうまくいった」という記憶です。

上司が手を出しすぎた成功は、部下の自信になりません。

だから、任せる範囲は小さくても、最後まで本人にやり切ってもらうことが欠かせません。小さく任せる範囲の決め方は、権限委譲とは?業務ではなく判断基準を渡すと任せられると繋がる話しです。

2つ目:人の成功を見ること

人がうまくいく様子を見る経験です。自分でやるより弱い情報ですが、見る相手が自分と似ているほど、効果が高まるとされています。

たとえば、同期が初めて大きな契約を取った。1年先輩が、自分と同じつまずきを乗り越えた。年次や立場が近い人の成功は、「自分にもできるかもしれない」という見通しにつながりやすくなります。

裏を返すと、立場も経験も大きく違う人の成功は、部下にとって「似た人」の成功にはなりにくいということです。上司の成功談が「あの人だからできた」で終わりやすいのは、このためです。

3つ目:言葉で励まされること

周りからの言葉です。「君ならできる」と言われると、一時的に見通しは上がります。

ただ言葉には経験の裏付けがありません。その為うまくいかない経験を一度すると、簡単に消えてしまいます。褒めても自信が続かないのは、部下が弱いからではなく、言葉という源がもともと崩れやすいからです。

4つ目:心と体の状態

心と体の状態です。人は緊張で手が震えたり、心臓の鼓動が速くなったりすると、それを「自分には向いていない」というサインとして受け取りやすくなります。

大事な商談の直前に、強い緊張を感じる。その体の反応を見て、「やっぱり自分には無理だ」と見通しを下げてしまう。緊張そのものより、それをどう受け取るかが、自己効力感を左右します。

InsideSparkの関わりは、2つの源に沿っている

InsideSparkは、次期リーダー候補の中堅社員に1年間伴走する自律型人材育成プログラムです。InsideSparkの関わりは、4つの源のうち、特に「自分でやり遂げた経験」と「人の成功を見ること」に沿っています。

・日報とAIコーチング(ウチガワ)
その日の行動と結果を自分の言葉で振り返る。うまくいったことは、なぜうまくいったのかまで言葉にする。
・毎月のグロース・ガイド面談
コーチが「今回、なぜその選択をしたのか」を聞く。選択の理由を本人が説明することで、結果を自分の判断と結びつける。
・1社最大3名で受講
年次や立場の近い仲間の変化を間近で見られる。

振り返りの仕方そのものは、内省とは?研修をしても部下が変わらないのは、事実を観察していないからだったで詳しく紹介しています。

この記事のFAQ

褒めて伸ばすのは、意味がないのですか?

意味がないわけではありません。言葉の励ましは、一時的にでも見通しを上げ、行動を始めるきっかけになります。ただ、言葉だけでは、うまくいかない経験を一度すると消えてしまいます。褒めたあとに、本人がやり切る経験が続いて初めて、自己効力感として残ります。

自信過剰な部下には、どう関わればいいですか?

自己効力感は、具体的な行動について「できそうだ」と見通すものです。自信過剰に見える部下は、その見通しと実際の結果がずれていることがよくあります。

その時は見通しを否定するのではなく、行動のあとに「予想と結果はどうだったか」を一緒に振り返ります。ずれを本人が自分で確かめることで、見通しは現実に合わせて調整されていきます。

まとめ

・自己効力感は、「この行動なら、自分にもできそうだ」という具体的な見通し。分かっているのに動けない部下に足りないのは、知識ではなくこの見通し
・自己効力感だけを持ち上げても、成果にはつながらない。実際の力の裏付けとセットで育てる
・最も強い源は、自分でやり遂げた経験。上司が手を出しすぎた成功は、部下の自信にならない
・人の成功を見るなら、年次や立場の近い人の成功の方が「自分にもできるかもしれない」につながる
・言葉の励ましは崩れやすい。褒めたあとに、本人がやり切る経験を続ける

褒め言葉は、自己効力感の入り口にはなります。けれどそれを支え続けるのは、本人がやり切った経験です。部下の自信を育てたいなら、言葉を足すより先にやり切れる場所を渡すことです。

部下の育て方や関わり方に迷ったら、無料の個別相談会でお気軽にご相談ください。

出典
・Bandura, A. (1977). Self-efficacy: Toward a unifying theory of behavioral change. Psychological Review, 84(2), 191–215.
・Stajkovic, A. D., & Luthans, F. (1998). Self-efficacy and work-related performance: A meta-analysis. Psychological Bulletin, 124(2), 240–261.
・Judge, T. A., Jackson, C. L., Shaw, J. C., Scott, B. A., & Rich, B. L. (2007). Self-efficacy and work-related performance: The integral role of individual differences. Journal of Applied Psychology, 92(1), 107–127.

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