入社して数年がたち、仕事もひととおり任せられるようになった。そろそろ「中堅なんだから」と、後輩の面倒や周りへの目配りも期待したい。
それなのに、目の前の自分の仕事で手一杯に見える。そんなもどかしさを感じている社長や上司の方は少なくありません。
この記事では、中堅社員に期待される役割を整理したうえで、期待しても役割を果たしてもらえないのはなぜか、会社は何を渡せばいいのかを、調査データとInsideSparkの現場から紹介します。
中堅社員とは
中堅社員に、決まった定義はありません。調査では「社会人5年目以上15年未満で、役職に就いていない社員」とする例があります。新人を卒業し、まだ管理職ではない層です。
ただ、年数はあくまで目安です。とくに創業から年数の浅い会社では、入社3年目の社員がもう中堅として扱われることも珍しくありません。
中堅社員に期待される3つの役割
会社や上司が中堅社員に期待する役割は、おおむね次の3つに整理できます。
・現場の中心として成果を出す:言われた仕事をこなすだけでなく、自分で考えて仕事を進め、結果に責任を持つ
・後輩を育てる:自分ができることを、後輩ができるようにする
・上司と現場をつなぐ:上司の方針を現場に伝え、現場の状況を上司に上げる
この先には、次のリーダー候補としての準備も控えています。中堅社員期をリーダー育成の始まりとしてどう捉えるかは、次世代リーダー育成とは?「候補者がいない」会社が最初にやることで整理しています。
役割は増えるのに、支えは少ない
役割が増える一方で、中堅社員自身はどう感じているのか。
ALL DIFFERENT株式会社とラーニングイノベーション総合研究所が、社会人5年目以上15年未満の非管理職800人に行った「中堅社員の意識調査(ミドルキャリアの「壁」編)」(2025年12月公表)によると、中堅社員が感じる壁として最も多かったのは「自分の知識・スキルに不安を感じることがある」(42.9%)でした。
その壁をどう乗り越えたかを聞くと、最も多かったのは「我慢・忍耐」(25.9%)で、「まだ乗り越えられていない」も25.7%ありました。4人に1人が我慢で乗り越え、さらに4人に1人はまだ乗り越えられていない、ということです。
同じ800人に今後のキャリアの志向を聞いた「キャリア志向編」(2026年1月公表)では、「マネジメントを行い、チームを統率したい」という管理職志向は6.3%にとどまり、「特にキャリアについての志向はない」が38.1%と最も多くなりました。
期待される役割は増えていく。けれど、本人はスキルへの不安を我慢でしのぎ、自分がどこに向かうのかも定まっていない。中堅社員の多くは、そんな状態で役割を背負い始めています。
中堅社員が役割を果たせない3つの理由
InsideSparkでは、中堅社員が役割を果たせないのは、本人の意欲の問題ではないと考えています。多くの場合、役割を果たすために必要なものが、まだ渡されていません。
期待が言葉になっていない
「中堅なんだから」「もう少し周りを見てほしい」。期待はあっても、それが何を指すのかは、上司の頭の中にしかないことがよくあります。言葉になっていない期待には、本人は応えようがありません。
InsideSparkでは受講が始まるときに、受講者の上司に「受講者にどうなってほしいか」を伺います。ある上司の方の答えは、「仕事の手触り感を実感できる人」でした。中身を聞くと、こう続きました。
・言われたことだけでなく、自分で考えて、その結果を受け入れること
・作業ではなく、仕事をしている感覚を持つこと
そのうえで、今の受講者については、「仕事をしている感や充実感はあるが、手触り感ではなさそう。既存のレールに沿っていて、自ら選択して新しく発信したり行動したりしたことがないから」と話していました。
「中堅なんだから」のままでは見えなかった、期待と今のあいだの差が言葉にすると具体的に見えてきます。ここまで言葉になって初めて、本人も何に向かえばいいのかが分かります。
プレイヤーとして評価されてきて、育て方は教わっていない
中堅社員の多くは、これまで自分の成果で評価されてきました。ところが中堅になった途端、後輩を育てることも求められます。
自分でやって成果を出すことと、後輩ができるようにすることは、求められる力が違います。後輩の育て方は、誰からも教わっていないことがほとんどです。
自分の向かう先が見えていない
先ほどの調査で、最も多かったのは「特にキャリアについての志向はない」でした。自分がどこに向かうのかが見えていなければ、役割は「やらされること」にしかなりません。
後輩の育成も上司と現場をつなぐことも、自分の成長と結びつかないまま、負担だけが増えていきます。
会社がすること
役割を果たしてほしいなら、会社は役割を求めるだけでなく、果たせる状態をつくる必要があります。
・期待する役割を、具体的な言葉で伝える:「中堅なんだから」ではなく、どんな場面でどう動いてほしいのかを言葉にする
・本人のなりたい姿と結ぶ:会社の期待と、本人がどうなりたいかを重ねると、役割が「やらされること」から自分の向かう先の一部に変わる
・役割を果たすための学び方を渡す:後輩の育て方や自分で考えて決める力は、自然には身につかない
なりたい姿と会社の期待の結び方は、フィードフォワードとは?フィードバックとの違いと部下育成での使い方で紹介しています。
InsideSparkは、中堅社員のための1年間
InsideSparkは次期リーダー候補の中堅社員に1年間伴走する自律型人材育成プログラムです。
管理職のための研修ではなく、中堅社員が今の役割を果たし、その先に進むための土台を育てます。
最初に上司に期待を伺い、受講者自身のなりたい姿と結びつけます。そのうえで、習慣化、ロジカルシンキング、クリティカルシンキングといった、昔から提唱されてきた基礎を1年間かけてしつこく教え込みます。
・月1回、コーチが企業に伺い、基礎研修を行う
・研修の翌日から次の研修まで、毎日宿題に取り組む。題材は、その日に現場で起きた出来事
・日報にコーチが返信し、学びと仕事をつなぐ
・毎月のグロース・ガイド面談で、受講者の選択の理由を聞き、考えを整理する
・月1回の上司報告会で、上司が受講者の変化を確かめ、研修の内容を日々の指導に生かす
中堅社員研修が効果を出す条件は、中堅社員研修が効果を出す条件|点ではなく線の伴走で詳しく書いています。
この記事のFAQ
「管理職にはなりたくない」と言う中堅社員には、どう役割を伝えればいいですか?
先ほどの調査でも、管理職志向は6.3%でした。管理職を望まない中堅社員は、珍しくありません。
ただ中堅社員の役割は、管理職になることではありません。自分で考えて仕事を進めること、後輩ができるようにすること、上司と現場をつなぐことは、管理職にならなくても、専門性を深める道でも求められます。役割を「管理職への準備」として伝えるのではなく、本人がどの道に進んでも土台になるものとして伝えると、受け取られ方が変わります。
まとめ
・中堅社員の役割は、現場の中心として成果を出す、後輩を育てる、上司と現場をつなぐ、の3つ
・役割は増えるのに、中堅社員の多くはスキルへの不安を我慢でしのぎ、向かう先も定まっていない
・役割を果たせないのは意欲の問題ではなく、期待の言葉、育て方、向かう先が渡されていないから
・「中堅なんだから」ではなく、どんな場面でどう動いてほしいのかを言葉にして伝える
・管理職を望まない中堅社員にも、役割はどの道に進んでも土台になるものとして伝える
中堅社員に役割を求めることは、間違っていません。ただ、求めるのと同じだけ、果たせる状態をつくる。期待を言葉にするところから、それは始まります。
部下の育て方や関わり方に迷ったら、無料の個別相談会でお気軽にご相談ください。
出典
・ALL DIFFERENT株式会社、ラーニングイノベーション総合研究所「中堅社員の意識調査(ミドルキャリアの「壁」編)」(2025年12月26日公表) https://www.all-different.co.jp/app/uploads/all/news_20251226.pdf
・ALL DIFFERENT株式会社、ラーニングイノベーション総合研究所「中堅社員の意識調査(キャリア志向編)」(2026年1月8日公表) https://www.all-different.co.jp/app/uploads/all/news_20260108.pdf



