2026.09.28部下・メンバーの育て方

「仕事がつまらない」は本人だけの問題ではなかった?

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「仕事がつまらない」は本人だけの問題ではなかった?

働き方改革が進む一方で「ゆるブラック」という言葉まで誕生し定着しました。
その枠組みから今回は、キャリア意識・転職理由の違いを分析した調査から、若手の「仕事がつまらない」という感覚の正体を、データと理論をもとに分解し、経営者・管理職として何ができるかを解説します。

「仕事がつまらない」人は、静かに消えていく

株式会社スコラ・コンサルトが実施した調査(2025年10月発表、全国の一般社員・管理職2,106名)は、「入社時はやる気があったが、今はやる気が下がった」と感じる理由を、性別・年代別に分析しています。

男女ともに30代以上で多く挙がっていたのは、「会社の体質や企業風土」「問題が改善されない」「業務量が多すぎ」でした。個人の性格ではなく、組織側に原因のある不満だということです。また、「同じ作業の繰り返しでマンネリ化」は、男性20代で3番目に多い理由、女性30代でも他の性年代より高い結果でした。

もう一つ、見逃せないデータがあります。同じ調査シリーズの別リリース(2025年8月発表)によると、やる気を失いながらも表面上は働き続ける「静かな退職者」が、全体の16.3%を占めています。しかも性別・年代を問わず、ほぼ均等に存在しています。

「仕事がつまらない」と感じている人は、多くの場合、大きな声で不満を訴えません。反発するのではなく、静かに関心を失い、最低限の業務だけをこなすようになる。

これが厄介なのは、パフォーマンスが目に見えて落ちるわけではないため、経営者・管理職が気づきにくいという点です。この状態は、「部下にやる気がない」は本当か?自律型人材が生まれる条件で解説した、仕事に「主語」が入っていない状態とも重なります。

「つまらない」の正体は、3つのうちどれかの欠落

「つまらない」という感覚は、あまりに漠然としていて、対処のしようがないように見えます。ただこの感覚を分解する枠組みがあります。

作家のダニエル・ピンクは、著書『モチベーション3.0』で、自己決定理論などの研究をもとに、創造的な仕事のパフォーマンスを左右するのは自律性・熟達・目的という3つの要素だと整理しています。自己決定理論そのものについては、「自己決定理論とは?部下が自分から動き出す3つの条件。」で詳しく書いています。

単純作業には報酬が有効に働きますが、考える余地のある仕事では、この3つが満たされているかどうかが、モチベーションを大きく左右します。

「仕事がつまらない」という一言の裏には、たいていこの3つのうち、どれかが欠けています。

自律性・熟達・目的、それぞれの欠如は何を生むか

①自律性の欠如

自分で判断させてもらえない状態です。

先ほどのデータにあった「問題が改善されない」という項目は、自分の意見や判断が反映されない、というこの状態の表れだと考えられます。

何をするにも指示を待ち、決めるのはいつも上か他人。自分の裁量がどこにもないと感じると、仕事は「やらされるもの」に変わります。この「指示待ち」がなぜ生まれるのかは、「指示待ちの部下が生まれる理由」で詳しく触れました。

②熟達の欠如

成長実感が得られない状態です。

エン・ジャパンが運営する若手ハイキャリア向け転職サービス「AMBI」の利用者を対象にした調査(2024年、39歳以下1,223名)によると、94%が企業選びで「成長環境を重視する」と回答した一方、3人に1人が「仕事を通じた成長実感がない」と回答しています。

成長実感がないことを理由に転職を考えたことがある人は、9割以上にのぼります。成長したいという気持ちがあるからこそ、実感できないことが、そのまま不満に直結しています。

③目的の欠如

何のためにこの仕事をしているのかが分からない状態です。

「会社の体質や企業風土」への不満は、自分の仕事や価値観と、会社の向かう方向が噛み合っていないと感じることの表れでもあります。自分の仕事が、誰の、何の役に立っているのかが見えないと、目の前の作業はただの作業になります。

この3つは、それぞれ独立していますが、重なって起きることも珍しくありません。指示を待つだけの日々(自律性の欠如)が続けば、成長の実感も得にくくなり(熟達の欠如)、何のためにやっているのかも見えなくなっていきます(目的の欠如)。

では、どうすればいいか

3つの欠如それぞれに、今日から始められる小さな一手があります。

①自律性の対処法

大きな権限委譲は必要ありません。

相談を受けたときに、すぐ答えを渡すのではなく、「〇〇さんは、どう進めればいいと考えている?」と一度聞き返す。本人が出した考えに対して、こちらが承認を返す。決めたのは自分だという感覚は、この一往復だけでも生まれ始めます。

②熟達の対処法

進歩を本人の言葉で語らせることが効きます。

「1ヶ月前の自分と比べて、ここはできる事が増えた!または、業務速度が上がった!というところある?」と聞いてみる。自分で気づいて言語化した変化は、他人に褒められるよりも、本人の中に強く残ります。月に一度でも、この問いを意図的に挟むことが、成長実感の欠如への一番の対処になります。

③目的の対処法

作業を依頼する一言に、行き先を添えるだけで十分です。

「この資料、最終的に〇〇さんが判断に使うものなんだ」というように、その作業が誰の、何につながっているのかを、依頼する瞬間に一緒に伝える。目的の欠如は、この一言の有無で大きく変わります。

ただし、これらはあくまで応急処置です。単発の声かけで終わらせず、継続的に積み重ねていく仕組みがなければ、効果は長続きしません。

自律性と熟達は、日々の伴走でしか育たない

この3つのうち、InsideSparkが直接育てられる領域と、そうでない領域があります。

自律性は、InsideSparkが最も力を入れている部分です。僕たちが定義する自律型人材の核でもある、5段階の円環(自ら学ぶ→考える→計画する→実行する→内省する)を回す力そのものが、自分で判断し、動く経験の積み重ねです。

熟達も同様です。「学び方を学ぶ」というプログラムの核は、まさに熟達感を自分の力で作り出せるようになることを指しています。先ほどのAMBI調査では、成長を妨げていると感じるものの1位が「身近にロールモデルがいない」(45%)でした。InsideSparkの専任コーチとの日々の伴走は、この「身近な伴走者の不在」を埋める役割も果たしています。

一方で、目的については、正直に言うと、InsideSparkが単独で作れるものではありません。「この会社で働く意味」「自分の仕事が誰の役に立っているか」という実感は、会社のVisionや、日々の業務の中でどう伝えられるかに大きく左右されます。

InsideSparkは、目的を見出す力(内省する力)は育てられますが、目的そのものを会社の代わりに用意することはできません。

この記事のFAQ

「マンネリ化している」と感じたら、部署異動させるべきですか?

効果がある場合もありますが、根本の解決にはならないことが多いです。異動しても、同じように指示を待つだけの働き方を続けていれば、新しい環境でもまたマンネリ化します。先に自律性・熟達の土台を整える方が、異動の効果も上がります。

「静かな退職者」は、どうやって見分ければいいですか?

分かりやすいサインの一つは、割り当てられた業務以上のことをやらなくなることです。以前より意見を言わなくなった、雑談が減った、任された範囲だけをこなすようになった、という変化があれば、注意して見る価値があります。

まとめ

・30代以上の男女に多い不満は「会社の体質」「問題が改善されない」「業務量が多すぎ」。「マンネリ化」は男性20代・女性30代で比較的高い
・「静かな退職者」は全体の16.3%。性別・年代を問わず存在する
・「つまらない」の正体は、自律性・熟達・目的のいずれかの欠如
・それぞれに今日から始められる小さな一手があるが、単発では効果が続かない
・InsideSparkは自律性と熟達は育てられるが、目的(Visionの共有)は会社にしか作れない

「最近、あの人やる気がなさそうだな」と感じたら、それは本人の資質の問題ではなく、3つのうちどれかが欠けているサインかもしれません。自社の場合はどうなのか、無料の個別相談会でお話を伺います。

出典
・株式会社スコラ・コンサルト「全国の一般社員・管理職2,106名へのアンケート調査」(2025年10月)
・株式会社スコラ・コンサルト「静かな退職者」調査(2025年8月)
・ダニエル・ピンク『モチベーション3.0』(講談社、2010年邦訳)
・エン・ジャパン株式会社「『仕事を通じた成長実感』意識調査-『AMBI』ユーザーアンケート-」(2024年3月)

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