2026.09.23部下・メンバーの育て方

「部下にやる気がない」は本当か?自律型人材が生まれる条件

ホーム / 読みもの / 部下・メンバーの育て方

「部下にやる気がない」は本当か?自律型人材が生まれる条件

「最近の若手は、指示以上のことをやろうとしない」
そう感じたことはないでしょうか。
この記事は、自律型人材の育て方を多角的に解説するシリーズの一つです。

今回はその見立てが実は誤診であること、そして実際に「自ら動き出す人」が生まれる”たった一つの共通点”について、データと実例をもとに解説します。

「やる気がない」は実は大誤診

つむぎ株式会社「仕事・キャリアと学びに関する意識調査」(2026年8月、現役世代の会社員600名)によると、58.7%が新しい知識やスキルを「学びたい」と回答しています。

一方で、「やりたいこと・挑戦したいこと」が明確な人はわずか23.7%でした。

この2つの数字の間には、大きな隔たりがあります。
学ぶ意欲はある。でも、何のために学ぶのか、その先に何を目指すのかが見えていない。

さらに自分のやりたいことと会社の方向性が重なっていると感じる人は23.3%にとどまり、66.7%が両者を結びつけて考える機会が職場に「あまりない・ない」と回答しています。ただし69.3%は、そうした機会を「必要」だと感じています。

こうした社員はサボっているわけではありません。指示された業務は、むしろ淡々とこなします。
指摘を受けても反発せず、素直に直すような一見扱いやすい人材に見えます。

しかしこれは納得しているからでも、意欲があるからでもありません。
仕事に「自分」という主語が入っていない状態です。

仕事を「こなす対象」として扱うか、「自分の人生の材料」として扱うか。
この社員にとって、仕事は対象としてすら意識されていません。
だから疑問も抵抗も生まれず、指摘された箇所だけを機械的に直します。

つまり、多くの人は「やる気がない」のではありません。
意欲を向ける先の「主語」が、まだ仕事の中に入っていないだけです。

なぜ「褒めて伸ばそう」が、かえって逆効果になるのか

このタイプの社員に対して、多くの会社は「褒めて伸ばそう」「今の時代は仕方ない」という対応を取りがちです。ハラスメントへの配慮から指摘がしづらくなり、表面的な励ましに流れてしまうのです。

問題は、この対応の主語です。

「今の若手は」「時代が違うから」という大きな主語で括るほど、目の前のその人が実際に何を考え、何に興味を持っているのかを、見に行かなくて済んでしまいます。会社側の言葉にも、誰に向けた期待なのかという固有の中身が、最初からなくなっていくのです。

本人には仕事に向ける主語がなく、会社には期待を向ける主語がない。
これは対立ではありません。互いに何も向けないまま、意図せずに一致してしまっている状態です。

しかも厄介なことに、この状態は良かれと思った対応(褒めて伸ばす、時代のせいにする)によって、むしろ強化され続けます。

もうお分かりですね?「自ら動きだす」為には「主語」が必要なんです。

変わったのはある小さなきっかけ

あるBtoBの営業会社で、僕はこの状態から実際に抜け出した社員を見てきました。きっかけは一つでした。その人の上司が、先に変わったことです。

上司自身の取り組む姿勢が変わったことに、周囲の社員が興味を持つ。
「何か様子が違う」「楽しそうに仕事をしている」、そこから「自分もやってみよう」という動きが生まれていきました。

重要なのは変わる前の段階では、会社側もその人たちを他の社員と特別に区別してはいなかったという点です。誰が変わるかは、事前には分かりませんでした。

これは、以前の記事「優秀社員が辞める?「自律したら辞める」は本当か」で解説した、辞めない組織の7条件のうち、条件5「自分より優秀で尊敬できる上司が、何より楽しそうに仕事をしている」と同じ構造です。

どれだけ立派な言葉で語っても、上司自身がつまらなそうに働いていれば説得力はありません。逆に、尊敬できる人が心から楽しんでいる姿は、それ自体が最も強いメッセージになります。

「個人の意欲」からではなく、「伝播」から生まれた

自律型人材を育てようとするとき、多くの会社は全員平等に、一人ひとりに直接働きかけようとします。研修を受けさせる、目標設定を細かく指導する、といった具合です。もちろん一人ひとりに働きかけるのも、全く間違いではありません。

しかし、今回見てきた実例が示すのは、変化は個人への直接的な働きかけからではなく、周囲の誰かの変化への興味から始まる、ということです。
上司が変わる。その変化に、本人が気づく。気づいたことで、初めて自分の中に主語が生まれる。
伝播から生まれる自律は部下を引き上げ、上司と部下を強力な結びつけを作ります。

具体的に何をすればいいか

この構造を踏まえると、打ち手の起点は「やる気のない社員」を無理矢理変えるのではなく、「上司」に置くべきだということが見えてきます。

僕たちはInsideSpark受講対象者を新人ではなく中堅社員を推奨しています。その理由が実はここにもあります。「中堅社員研修が効果を出す条件|点ではなく線の伴走」も参考になります。

InsideSparkでは月1回の上司報告会を通じて、受講者から上司へ報告することで研修転移を図る機会を作っています。研修転移とは何かは、「研修転移とは?学びが現場で使われない構造的な理由」で解説しています。

中堅社員の受講者は既に部下を持っている方か、または次期上司候補になります。つまり受講者が変わる過程そのものが、部下にとっての「興味を持つきっかけ」になります。

次期上司になる為に準備を進め、行動変容を起点に周囲へ伝播させていく設計です。管理職になる前に何を整えておくかは、「管理職育成の土台は昇進前にできている。エンゲージメント低下から考える」で触れています。

この記事のFAQ

「やる気がない」社員に、無理矢理働きかけるのは無意味ですか?

正面から正直にお話します、残念ながら無意味です。本人に主語がない状態で目標設定を迫っても、上司の答えを探す人材になります。まずは本人の仕事に対する「主語」を一緒に作る事が、遠回りの様でいちばん近道になります。

まとめ

・自ら動き出す共通項は「主語」が必要
・「やる気がない」ように見える社員の多くは、実は仕事に向ける「主語」がまだ入っていないだけ
・「褒めて伸ばそう」「時代のせいにする」対応は、かえって主語の空白を強化する
・変化のきっかけは、個人への直接的な働きかけではなく、上司自身の変化への興味から生まれる
・自律型人材が育つ起点は、社員本人ではなく上司にある為、次期上司の準備を進める必要がある

「最近の若手は」という大きな主語を使う前に、目の前のその人が、まだ何にも興味を向けられていないだけなのかもしれない、と考えてみることをおすすめします。自社の場合はどうなのか、無料の個別相談会でお話を伺います。

出典
・つむぎ株式会社「仕事・キャリアと学びに関する意識調査」(2026年8月)

← 読みもの一覧へ 無料相談を予約する