エンゲージメントを上げるために、サーベイを実施し、施策を考え、現場に展開する。
その前に、一つ確かめておきたいことがあります。施策を部下に届ける役割を担う、管理職自身の状態です。
この記事は、自律型人材の育て方を多角的に解説するシリーズの一つです。
今回は、世界的に下がっている管理職のエンゲージメントのデータをもとに、管理職育成のさらに手前で、何を整えておくべきかを考えます。
管理職のエンゲージメントは、この3年で大きく下がっている
米ギャラップ社の「State of the Global Workplace」2026年版によると、世界のマネジャーのエンゲージメントは、2022年の31%から2025年の22%まで、9ポイント下がりました。特に2024年から2025年にかけては、27%から22%へと、1年で5ポイント下がっています。
一方で部下を持たない一般社員は、同じ期間に20%から19%とほぼ横ばいです。
同社は近年の世界全体のエンゲージメント低下の多くは、マネジャーのエンゲージメント低下で説明できるとしています。
本来、マネジャーは一般社員より一貫してエンゲージメントが高い傾向があるものの、その差がいま急速に縮まっている、という分析です。
チームのエンゲージメントの差は、管理職で大きく変わる
管理職の状態がなぜ重要なのか。
ギャラップはチームごとのエンゲージメントのばらつきのうち、少なくとも70%はそのチームを率いるマネジャーの違いで説明できると推計しています。同じ会社でもどのマネジャーの下にいるかで、チームの状態が大きく変わるということです。
さらに18万超のチームを対象にした2024年の分析では、エンゲージメントの高いマネジャーほど、そのチームのエンゲージメントも高いという関係が示されています。
どちらも「関係がある」ことを示すデータで、管理職の状態だけでチームのすべてが決まるわけではありません。ただエンゲージメント施策を現場に配る前に、まず管理職の状態を見る理由としては十分な重みがあります。
管理職になってからでは、学ぶ余力が残りにくい
では、管理職のエンゲージメントはなぜ下がっているのか。
ギャラップは、マネジャーのエンゲージメントの落ち込みが最も大きかった南アジアについて、組織のフラット化で管理職のポストが減り、一人のマネジャーが抱える部下の人数が増えたことが一因かもしれないと分析しています。
同社の別の研究でも、担当する部下の人数が増えるほどマネジャーのエンゲージメントが下がりうることが示されています。
日本の状況については、ギャラップ・ジャパンのレポート「変革への挑戦:日本の職場の新しい姿」(2025年)が、多くの日本企業は成績優秀な人材を管理職に昇進させる一方で、チームのエンゲージメントを高めるために必要なスキルを磨く研修を十分に提供していない、と指摘しています。
インタビューを受けたリーダーの一人は、リーダーシップ研修に参加してもマネジャーにはその効果を発揮するための十分な余力がないと述べています。
昇進の決め方そのものにも問題があります。ギャラップは2015年の記事で、多くの会社がマネジャーを前の役割での成果や勤続年数で昇進させていると指摘しました。同じ記事ではマネジメントには生まれ持った傾向の影響も大きいとしつつ、会社が育成に投資すれば高いレベルで機能できる人も一定数いる、としています。
僕自身、営業・ライター・デザイン・マーケと、さまざまな部署で、プレイヤーとして成果を出した人が管理職になる場面を見てきました。実感として、プレイヤーと管理職は全く別物です。そもそも、戦っているゲームが違います。
プレイヤーとして勝ってきた人を、別のゲームに放り込み、そこで余力のないまま学ばせる。
管理職のエンゲージメントが下がる背景には、この順番の問題があると僕は考えています。
管理職の準備より前に、中堅社員期に整えておくこと
ここからはギャラップの提言ではなく、僕の実務からの視点です。
先に断っておくと、部下の育て方や評価・チーム運営といった管理職としての力は、管理職になってからその役割に合わせて学ぶものです。ゲームが違う以上、管理職の育成は管理職の育成として別に必要です。
ここで言いたいのは、その準備のさらに手前の話です。どのゲームに進んでも土台になる力を、中堅社員期に整えておく。僕は、次の3つだと考えています。
自分で決めて、結果を引き受ける経験
役割が上がるほど、正解のない中で決める場面は増えていきます。指示された範囲を正確にこなす経験だけでは、この力は育ちません。
以前関わった組織で、チームの決定を段階的にメンバーへ委ねていったことがあります。まず個人として、自分で決め、失敗の責任も自分で引き受ける経験を重ねてもらいました。
そのうえで営業出身とデザイナー出身の2人をチーム長に据えたところ、このチームが最も機能しました。
2人は計画の段階で意見をぶつけ合い、実行に入ってからはお互いの持ち場を尊重して、周りのチームより速く決め、速く修正していました。
自分自身が自律する経験
自分で学び・考え・計画し・実行し・振り返る。
この流れを、自分の意思で回す経験です。僕自身、管理職になった直後に「これは管理職になる前に身につけておきたかった」と感じたのは、まさに自律型人材の育て方でした。
自律とは何か、どうすれば育つのか。
それを管理職になってから手探りで学ぶのではなく、自分が自律していく経験を通して先に知っておく。その経験は、その後どんな役割に就いても土台になります。
自分の状態を観察する習慣
役割が上がるほど、自分の状態を振り返る時間は減っていきます。
その前に、自分に起きていることを事実から観察する習慣を持っておくことが、自分のエンゲージメントの変化に気づく土台になります。観察の方法については、「内省とは?研修をしても部下が変わらないのは、事実を観察していないから」で詳しく解説しています。
部下が変わると、上司の仕事の手応えも変わる
InsideSparkを導入した会社の部長は、以前チームが指示がないと動けない状態に悩んでいたそうです。部長ご自身がその様なチームを作り上げてしまった、とお話いただきました。
受講したのは、この部長のチームのメンバーです。受講後メンバーは起きた問題を自分ごととして捉え、自分で考えて改善を回すようになりました。
そして部長は、こう話しています。
僕の手が空いて楽になった事は勿論ですが、仕事の手触りが変わった事でイキイキと働くメンバーを見ていると、僕も「組織とか仕事ってやっぱりいいものだな」と改めて実感します!
一つの事例なので、ここから一般的な結論は言えません。
ただ部下が自分で動けるようになることで、管理職自身の仕事への手応えが戻ってくることがある。
管理職のエンゲージメントを考えるうえで、見落とされがちな経路だと思います。
InsideSparkについて
InsideSparkは立ち上げ当初、「上司がいないと動けない組織の為の、自律育成スクール」と自らを紹介していました。表現は変わっても、目指しているものは今も同じです。小規模で開催される仲間と共に成長していく場です。
対象は管理職ではなく、次期リーダー候補となる中堅社員です。
基礎研修、AIコーチング、日報、グロース・ガイド面談、上司報告会の5つで、1年間伴走しながら、自分で決めて動く力と、自分を観察する習慣を、日々の業務の中で育てていきます。
月に一度の上司報告会では、受講者の変化を上司と一緒に確かめます。受講者の成長を支えるだけでなく、上司が部下の変化を手応えとして受け取れる場にしたいと考えています。
この記事のFAQ
管理職になってから、管理職研修を受けさせるのではだめですか?
だめではありません。管理職としての力は、管理職になってから学ぶ必要があります。ただ、ギャラップは一度きりの研修より、継続的で個別の育成に投資することを勧めています。また日本特集レポートが指摘するように、管理職になった後は、研修の効果を発揮する余力そのものが不足しがちです。昇進後の研修とは別に、その手前の土台を中堅社員期に整えておくと、昇進後の育成も生きやすくなります。
中堅社員のうちに、何を見ておけばいいですか?
指示された範囲を正確にこなせるかより、正解のない場面で自分で決め、その結果を引き受けているかを見てください。任せる範囲を少しずつ広げたときに、どう判断し、失敗したときにどう振り返るか。そこに、その人の土台が表れます。
まとめ
・世界のマネジャーのエンゲージメントは、2022年の31%から2025年の22%まで下がり、一般社員との差が縮まっている
・チームごとのエンゲージメントのばらつきの少なくとも70%は、マネジャーの違いで説明できると推計されている
・多くの会社は、前の役割での成果や勤続年数で管理職を選び、昇進後は学ぶ余力が残りにくい
・プレイヤーと管理職は別のゲーム。管理職としての育成は別に必要だが、その手前の土台(自分で決めて引き受ける経験、自律する経験、自分を観察する習慣)は、中堅社員期に整えておきたい
・部下が自分で動けるようになると、管理職自身の仕事の手応えが戻ることもある
エンゲージメント施策を現場に配る前に、まず管理職の状態を見る。そして、管理職としての力は昇進してから育てるものですが、その土台は、昇進のずっと前にできています。自社の場合はどうなのか、無料の個別相談会でお話を伺います。
出典
- Gallup「Global Employee Engagement Continues Decline」(2026年4月、State of the Global Workplace 2026年版の概要) https://www.gallup.com/workplace/708071/global-employee-engagement-continues-decline.aspx
- Gallup「How Can Leaders Improve Employee Engagement and Company Culture?」(2026年9月) https://www.gallup.com/workplace/712895/leaders-improve-employee-engagement-company-culture.aspx
- Gallup「Managers Account for 70% of Variance in Employee Engagement」(2015年4月) https://news.gallup.com/businessjournal/182792/managers-account-variance-employee-engagement.aspx
- Gallup, Inc. & 英国経営者協会(IoD)日本部会「変革への挑戦:日本の職場の新しい姿」(2025年10月) https://www.gallup.com/jp/695834/%E5%A4%89%E9%9D%A9%E3%81%B8%E3%81%AE%E6%8C%91%E6%88%A6-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E8%81%B7%E5%A0%B4%E3%81%AE%E6%96%B0%E3%81%97%E3%81%84%E5%A7%BF.aspx



