2026.10.06研修・育成の選び方

研修の効果測定とは?満足度アンケートで終わらせない4つの段階

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研修の効果測定とは?満足度アンケートで終わらせない4つの段階

研修のあとにアンケートを取ると、満足度は5段階で4以上。受講者の感想も前向き。それなのに、数か月たっても現場の動き方は変わっていない。人事や育成の担当者であれば、一度は経験のある場面ではないでしょうか。

この記事は、自律型人材の育て方を多角的に解説するシリーズの一つです。

今回は、研修の効果測定の基本となるカークパトリックの4段階と、満足度アンケートだけでは研修の効果が分からない理由、そして行動と成果をどう確かめればいいのかを、研修評価の研究をもとに解説します。

研修の効果測定とは

研修の効果測定とは、研修によって受講者や組織に何が起きたのかを確かめることです。

ここで押さえておきたいのは、「何を測るか」によって、分かることがまったく違うという点です。受講者が研修を気に入ったかどうかと、現場で行動が変わったかどうかは、別の問いです。

その違いを整理する枠組みとして、最もよく使われているのがカークパトリックの4段階です。

カークパトリックの4つの段階

カークパトリックの4段階は、米国の研究者ドナルド・カークパトリック氏が1959年に発表した、研修評価の枠組みです。研修の効果を、次の4つの段階に分けて捉えます。

反応:受講者が研修をどう受け止めたか。研修直後の満足度アンケートが代表的です。

学習:知識やスキルが身についたか。理解度テストや演習の出来で確かめます。

行動:学んだことを、現場で実際に使っているか。研修後の仕事ぶりを見て確かめます。

成果:行動の変化が、売上や離職率、顧客満足など、組織の成果につながったか。

段階が上がるほど、研修そのものから離れ、現場や組織の側で起きることになります。そのぶん測るのに時間も手間もかかり、多くの企業の評価は、反応や学習の段階で止まりがちです。

その構造的な理由は、「研修転移とは?学びが現場で使われない構造的な理由」で書いています。

満足度が高くても、現場で使われるとは限らない

4つの段階は、反応が良ければ学習が進み、学習が進めば行動が変わる、という連鎖として受け取られることが多くありました。

だからこそ多くの企業が、手軽に取れる満足度を、研修の効果の手がかりとして使ってきました。では、本当に満足度から行動の変化を見通せるのでしょうか。

アリガー氏らは1997年、研修評価の指標どうしの関係を調べた34の研究を統合して分析しました。このとき、研修直後の反応を2種類に分けています。「楽しかった」「満足した」という感情面の反応と、「仕事に役立ちそうだ」という有用性の反応です。

その結果、現場での活用(研修転移)と関係が強かったのは、有用性の反応の方でした。しかも有用性の反応は、研修直後や時間をおいて測った理解度テストの結果よりも、現場での活用と強く関係していました。

その後、ブルーム氏らが2010年に行った研修転移のメタ分析でも、同じ傾向が確認されています。満足度のような感情面の反応は、現場での活用とほとんど関係がなく(相関はほぼゼロ)、有用性の反応は、弱いながらも関係がありました。

「使えそうだと思った人ほど使う」こと自体は、当たり前に聞こえるかもしれません。この研究で見るべきなのは、別の2点です。

1つ目は、多くの企業が測っている満足度が、現場での活用とほとんど関係がなかったこと。

2つ目は、関係があった有用性の反応でさえ、つながりは弱かったことです。

つまり、研修直後のアンケートをどれだけ工夫しても、現場で使われるかどうかは一部しか見通せません。行動が変わったかどうかは、研修の後に直接確かめるしかないということです。

この結果は、研修を選ぶ場面にもそのまま当てはまります。

研修会社の案内には「受講者満足度95%」のような数字がよく並んでいますが、それが示しているのは研修の時間が受講者にとって良いものだったかどうかであって、現場で使われたかどうかではありません。

研修を選ぶとき、この数字を決め手にしていないでしょうか。

比べるべきは満足度の高さより、研修の後に受講者の行動がどう変わったかを、その研修会社がどう確かめ、どう示しているかです。関連:中堅社員研修が効果を出す条件|点ではなく線の伴走

アンケートは「満足したか」より「使えそうか」を問う

それでも、研修直後のアンケートで聞く内容は、すぐに変えられます。予測の精度は高くなくても、本人の使う場面を引き出す問いは、研修後の関わりの手がかりになるからです。

「研修に満足しましたか」「講師の説明は分かりやすかったですか」という問いは、研修の運営を改善するには役立ちます。ただ、現場での活用を見通す材料にはなりにくいことが分かっています。

代わりに、次のような問いを加えてみてください。

・今日学んだことのうち、来週の仕事で使える場面はどこですか
・最初に試すことを1つ挙げるとしたら、何ですか
・使おうとしたときに、障害になりそうなことは何ですか

点数で答える問いよりも、具体的な場面を書いてもらう問いの方が、本人が使う姿を思い描けているかが分かります。書かれた内容は、研修後に上司が声をかけるときの手がかりにもなります。

行動の変化は、研修の後に時間をかけて見る

反応の段階をどれだけ工夫しても、行動が変わったかどうかは、研修の後にしか分かりません。行動の段階を確かめるには、次の3つを押さえておく必要があります。

1つ目:何を見れば変わったと言えるのかを、先に決めておくこと。

「主体性が上がったか」では、誰も判断できません。「会議で自分から提案する回数」「報告に原因と改善案が入っているか」のように、上司が日々の仕事の中で目にできる行動にまで落としておきます。

2つ目:1回で判断しないこと。

行動の変化には時間がかかり、一度変わった行動が元に戻ることもあります。数週間後、数か月後と、複数回にわたって見ていく方が、実態に近づきます。

3つ目:見る人を研修の担当者に限らないこと。

現場での行動を日常的に見ているのは、上司や周囲のメンバーです。本人の振り返りと、上司から見えている変化を突き合わせることで、本人も気づいていない変化や、本人が変わったつもりでも周りには伝わっていないずれが見えてきます。

この「事実から観察する」視点については、「内省とは?研修をしても部下が変わらないのは、事実を観察していないからだった」でも書いています。

成果は、研修を始める前に決めておく

4つの段階は、反応→学習→行動→成果の順に並んでいます。ただ、測る順番を考えるときは、逆から考えた方がうまくいきます。

カークパトリック氏の息子のジェームズ・カークパトリック氏らは、のちにこの枠組みを見直し、研修を計画する段階で、まず成果(4段階目)から決めることを勧めています。どんな成果を出したいのか。そのために、現場でどんな行動が必要なのか。その行動のために、研修で何を学ぶのか。この順で決めておけば、研修後に「何を測ればいいのか分からない」という状態を避けられます。

あわせて、研修だけで行動が変わるわけではなく、研修後に上司が声をかけたり、実践を振り返る場を設けたりといった、行動を支える仕組みが欠かせないとしています。研修の効果測定とは、研修が終わってから考えるものではなく、研修を始める前から準備するものだと言えます。

InsideSparkでの変化の確かめ方

InsideSparkは、効果をROIのように一つの数字で証明する仕組みではありません。そのうえで、行動の変化を確かめる材料を、上司・本人の両方に届けることを大切にしています。

上司に対しては、受講企業の期ごとのキックオフの場で、ここまでの受講者の変化を上司の方々からヒアリングしています。ご要望があれば、プログラムの内容や受講者の成長について、全社発表の場でお話しすることもあります。

あわせて、変わったところ・まだ変われていないところを、担当コーチや僕からも必要に応じてお伝えします。ウチガワ(AIコーチング)とのやりとりがどのくらいあったかといった、定量的な情報も共有に含めます。

この共有は、そのまま本人の今後のキャリアの進め方の相談にもつながります。こうしているのは、受講者に研修の型を覚えてほしいからではなく、会社が求める人材として、きちんと評価されるようになってほしいからです。

受講者本人には、毎月の月次レポートを届けています。このレポートはあえてすべてAIで作成していて、それまでのウチガワとのやりとりの履歴だけをもとに、「思考の癖」「価値観」「よく使う言葉」「興味関心」の4つの観点でまとめます。

コーチの主観や遠慮を挟まず、本人が書いた言葉そのものから傾向を返すことで、本人が自分の変化を事実として見られるようにしています。

この記事のFAQ

ROI(投資対効果)まで測るべきですか?

4つの段階の先に、研修の投資対効果(ROI)まで金額で算出しようとする考え方もあります。ただ、成果の変化を研修だけの効果として切り分けるのは難しく、手間もかかります。まずは、行動の段階を確かめられる状態をつくることを優先し、その先で、成果との関係を見ていく方が現実的です。

研修の効果が出るまで、どのくらい待てばいいですか?

研修の内容や本人によって違いますが、行動の変化は数週間から数か月かけて表れることが多く、一度変わっても元に戻ることがあります。研修直後の1回で判断せず、研修後の一定期間、複数回にわたって確かめる前提で計画しておくと、判断を誤りにくくなります。

まとめ

・研修直後のアンケートには、満足度に加えて「どこで使えそうか」を具体的に書いてもらう問いを入れる
・研修を選ぶときは、満足度の高さより、受講後の行動の変化をどう確かめているかを比べる
・研修を始める前に、どんな成果を出したいか、そのために現場でどんな行動が必要かを決めておく
・行動の変化は、上司が日々目にできる具体的な行動にまで落とし、研修後に複数回確かめる
・本人の振り返りと、上司から見えている変化を突き合わせる

正直に言うと、研修の効果を一つの数字で証明するのは、どんな研修でも難しいと僕は思っています。それでも、満足度の高さで安心するのをやめ、行動の変化を見続ける仕組みを持つだけで、次に何を変えればいいかは見えてきます。自社の研修がどの段階で止まっているのか、無料の個別相談会でお話を伺います。

出典
・Kirkpatrick, D. L. (1959). Techniques for evaluating training programs. Journal of the American Society of Training Directors, 13.
・Alliger, G. M., & Janak, E. A. (1989). Kirkpatrick’s levels of training criteria: Thirty years later. Personnel Psychology, 42(2), 331-342.
・Alliger, G. M., Tannenbaum, S. I., Bennett, W., Jr., Traver, H., & Shotland, A. (1997). A meta-analysis of the relations among training criteria. Personnel Psychology, 50(2), 341-358. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1744-6570.1997.tb00911.x
・Blume, B. D., Ford, J. K., Baldwin, T. T., & Huang, J. L. (2010). Transfer of training: A meta-analytic review. Journal of Management, 36(4), 1065-1105. https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0149206309352880
・Kirkpatrick, J. D., & Kirkpatrick, W. K. (2016). Kirkpatrick’s Four Levels of Training Evaluation. ATD Press.

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