2026.09.28組織づくり

自走する組織とは?個人の自律だけでは生まれない理由

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自走する組織とは?個人の自律だけでは生まれない理由

「自律型人材を増やせば、いずれ組織は自走するはずだ」
そう考えたことはないでしょうか。

この記事ではその前提が実は半分しか正しくないこと、そして自律した個人の集まりを、組織としての秩序に変えるために本当に必要なことを解説します。

自走できていない日本企業の実態

ギャラップ社と英国経営者協会(IoD)が共同で発表した「変革への挑戦:日本の職場の新しい姿」(2025年10月)によると、日本の従業員エンゲージメント率はわずか7%で、世界で最も低い水準です。
従業員の93%が、仕事に「エンゲージしていない」または「全くエンゲージしていない」状態にあります。

同レポートでインタビューを受けた日本企業のリーダーの一人は、こう述べています。
「労働条件を改善しても指数は改善しなかったが、『やりがいのある仕事』に焦点を当てたら、従業員エンゲージメントが向上した」。労働環境の改善は必要ですが、それだけでは組織は自走を始めません。

自律した個人が集まっても、組織は自走しない

だからといって、個人の自律さえ引き出せば解決するわけでもありません。

自律した個人が、それぞれ違う判断基準で動いていたらどうなるでしょうか。一人ひとりは主体的に考え、行動しているのに、全体としては噛み合わず、むしろ混乱が増える。これは実際によくある光景です。

自律した個人の集合体が、そのまま組織の秩序になるわけではありません。
個人の自律と、組織の自走のあいだには、もう一段別のレイヤーが必要です。
それが、判断基準の共有です。

自走する組織は、「会社が決めること」と「メンバーが決めること」を分けることから始まる

判断基準を共有するための、具体的な設計原則があります。それは、何を会社が決め何をメンバーが決めるかを、明確に切り分けることです。

僕が組織運営に関わってきた中で、管理職以上の管理体制を必要としない組織は、この境界線が明確でした。四半期の会社目標や全社KPIは、会社が握ります。一方で、月次目標、服装、賞与分配、部署横断ルール、チーム運営、出社時間といったものは、すべてメンバー自身が決めます。

境界線を引くこと自体が、管理を手放す設計になります。何でも自由にしていいわけではなく、何でも会社が決めるわけでもない。どこまでが自分たちの裁量なのかが明確だからこそ、その裁量の中で自律的に判断できるのです。

境界線を機能させるのは、徹底した透明性

境界線を引いただけでは、まだ機能しません。「メンバーが決める」領域で、実際に何を基準に判断すればいいのかが、全員に見えている必要があります。

僕が実践してきたのは、評価基準・判断基準・組織の向かう先を、あらゆる面で可視化することでした。具体的には、暗黙知を積み上げて評価基準そのものを制度として言語化すること。

実際に起きた事象とセットで、社内ブログなどを通じて「何が重要か」を発信し続けること。そして、判断基準に沿った行動や成功事例を、本人以上に興味を持って喜び、人前で賞賛することです。これは相手が喜ぶからという理由だけでなく、どこで評価されるのかを分かりやすくする為の意図的な設計でした。

この一部は、先ほどのギャラップのレポートとも重なります。
同レポートは、エンゲージメントを高める打ち手の一つとして「マネジャーが部下を管理するだけでなく、コーチングできるようにする」ことを挙げ、チームのエンゲージメント差の70%はマネジャーに起因すると報告しています。

マネジャーのエンゲージメント自体が世界的に下がっているというギャラップの最新データは、「管理職育成の土台は昇進前にできている。エンゲージメント低下から考える」で扱っています。

「気遣いのできるマネジャー」「継続的な会話」という2つの要素は、事象とセットで発信し続けること、成功を本人以上に喜ぶことと、直接つながっています。

ただし正直に言うと、「何を会社が決め、何をメンバーが決めるか」という線引きまでは、このレポートは踏み込んでいません。

近い問題は指摘されています。あるリーダーは、新しい試みを始めても企業文化が追いついておらず、従業員は正式な許可がない限り動けない、と述べています。レポート自体も、マネジャーにより大きな裁量を与えることを提案しています。

許可がないと動けないという症状と、裁量を渡すべきだという方向性までは示されている。その間にある「どこまでを渡すか」の線引きは、僕自身の実務から得た視点です。

透明性がない組織の末路

対比として、逆の組織も見てきました。
情報を与えず、経営側や管理職側が有利になる状況を作り続ける組織です。

こうした組織では、発信される内容や使われる言葉が、時間とともに曖昧になっていきます。何を考えているのかが分からず、不信感だけが溜まっていく。境界線もなければ、判断基準も見えない状態では、メンバーは自分で判断のしようがなく、指示を待つしかなくなります。

次第に条件以外で残る理由がなくなり、気がつけば優秀な社員から退職していきます。この現象については、優秀社員が辞める?「自律したら辞める」は本当かで詳しく解説しています。

透明性には、正直に言うと副作用もある

一つ、誠実にお伝えしておきたいことがあります。
可視化を突き詰めれば、評価されない人があぶり出されることも、当然の帰結として起こりえます。

それを狙って設計したわけではありません。
ただ透明性を追求した先に起きることは、後から振り返れば想像できたことでした。透明性は、良いことずくめの仕組みではありません。

誰の目にも判断基準が見える以上、その基準に届いていない人も、同じように見えてしまいます。

InsideSparkができること

境界線の設計や組織全体の透明性をどう作るかは、正直に言うとInsideSparkが直接担える領域ではありません。これは会社自身が引き受けるべき設計です。

InsideSparkが育てられるのは、その境界線の中で自律的に判断できる、個人(中堅社員)の力です。会社が「メンバーが決めること」として裁量を渡したとき、その裁量を使いこなせる人材がいなければ、境界線を引く意味がありません。組織の設計と個人の育成は常に両輪です。

この記事のFAQ

境界線は、どのくらいの粒度で決めればいいですか?

最初から精緻に決めすぎる必要はありません。まずは「四半期の目標」のように、会社にとって譲れない大枠だけを明確にし、それ以外は少しずつメンバーに委ねていく形で始めるのが現実的です。

透明性を高めると、社内の雰囲気が悪くなりませんか?

可視化した直後は、一時的に緊張感が高まることがあります。ただ、それは「評価されない人があぶり出される」という副作用の裏返しでもあります。長期的には、何を基準に評価されるかが分かる方が、メンバーは安心して自律的に動けるようになります。

まとめ
・日本企業のエンゲージメント率はわずか7%。労働条件の改善だけでは自走は生まれない
・自律した個人が集まっても、判断基準がバラバラなら組織は自走しない
・自走する組織は、「会社が決めること」と「メンバーが決めること」の境界線を引くことから始まる
・境界線を機能させるのは、判断基準を見える形にし続ける、徹底した透明性
・透明性には、評価されない人があぶり出されるという副作用もあることは覚えておきたい

「自律型人材を増やせば、いずれ組織は自走する」という期待は、半分正しく、半分は足りません。境界線と透明性という、もう一段の設計があって初めて、自律は組織全体の秩序になります。自社の場合はどうなのか、無料の個別相談会でお話を伺います。

出典
・Gallup, Inc. & 英国経営者協会(IoD)日本部会「変革への挑戦:日本の職場の新しい姿」(2025年10月)
https://www.gallup.com/jp/695834/%E5%A4%89%E9%9D%A9%E3%81%B8%E3%81%AE%E6%8C%91%E6%88%A6-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E8%81%B7%E5%A0%B4%E3%81%AE%E6%96%B0%E3%81%97%E3%81%84%E5%A7%BF.aspx

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