「あの研修、結局何だったんだろう」。数ヶ月後、誰かがそうつぶやいたことはないでしょうか。
この記事では、研修の効果が現場に定着しない構造的な理由を、「研修転移」という概念とデータをもとに解説します。
「研修転移」とは何か
研修転移とは、立教大学教授・中原淳氏が著書『研修転移の理論と実践』で定義した概念で、「研修で学んだことが、仕事の現場で一般化され役立てられ、かつその効果が持続されること」を指します。
ここで注目したいのは、「役立てられる」だけでなく「持続される」という条件が入っている点です。多くの人が「良い研修」をイメージするとき、思い浮かべるのは「学んだ直後に納得感があった」という状態です。
しかし研修転移の定義に照らせば、それはまだ入り口にすぎません。1ヶ月後、3ヶ月後も、その学びが行動として残っているかどうかが本質です。
なぜ多くの企業は「満足度」でしか測れないのか
研修の効果測定には、カークパトリックの4段階評価モデルという考え方があります。レベル1(反応・満足度)、レベル2(学習・理解度)、レベル3(行動・現場での変化)、レベル4(成果・経営指標への影響)の4段階です。研修転移が起きているかどうかは、レベル3以降で初めて確認できます。
ところが、多くの企業はレベル1(研修直後の満足度アンケート)で評価を止めています。UMUジャパン「研修の効果測定に関する実態調査」(2022年11月、従業員1,000名以上の企業の人事担当者108名)によると、3割以上が研修後の効果測定を「十分にできていない」と回答しました。

そして、できていない理由の75.8%が「成果との明確な繋がりが見出せないため」でした。
この調査対象は従業員1,000名以上の大企業ですが、人事機能が体系化されている大企業でもこの数字だとすれば、体制構築のリソースがより限られる中小企業では、同等かそれ以上の壁があると考えます。
これは人事担当者が測定をサボっているわけではありません。レベル3(行動)以降を測るには、研修担当者ではなく現場の上司の協力が不可欠であり、そもそも測定の仕組み自体を設計するハードルが高いのです。満足度で止まるのは、個人の怠慢ではなく、多くの企業に共通する構造的な壁だと言えます。
転移が起きない、本当の理由
株式会社FCE「人材育成に関する調査」(2024年10月、上場・非上場企業の人事責任者・担当者219件)では、「人材育成方針や教育制度を定め、十分に実施している」と回答した企業はわずか25%でした。

そして、人材育成の悩み・課題として最も多く挙げられたのが「研修がその場限りのものになっていて、実務や実践に活かされていない」(40%)でした。

このデータが示しているのは、研修の内容そのものの質の問題ではなく、研修と現場をつなぐ仕組みが存在しないという構造です。多くの企業では、「いま」起きている問題への対応として単発の研修が企画され、その研修が終わった後、現場に接続する仕組みがないまま次の研修が計画されます。転移が起きないのは、講師の力量でも受講者のやる気でもなく、この「単発性」そのものが原因です。
転移を生む研修と、生まない研修の違い
僕はこの違いを、「点」と「線」という言葉で捉えています。
単発の研修は、どれだけ内容が優れていても「点」です。点は、学んだ瞬間の納得感を生みますが、翌日から誰もその学びを見ていなければ、日常業務にすぐに埋もれていきます。研修の質を上げることに投資しても、点が増えるだけで、線にはなりません。
一方「線」の伴走は、学んだことを日々の行動に落とし込み・振り返り・現場に繋ぐという循環を、時間をかけて回し続ける設計です。研修転移の理論が示す「役立てられ、かつ持続される」という条件は、この線の中でしか満たされません。
『InsideSparkが「選ばれる理由」』も、この点と線の違いに集約されています。
InsideSparkは、効果測定ツールではない
ここまで読んで、「InsideSparkを使えば、効果測定の悩みも解決するのか」と期待された方に、正直にお伝えしなければならないことがあります。
InsideSparkは、効果測定ツールでも、ROI算出システムでもありません。UMUデータが示した「成果との明確な繋がりが見出せない」という測定上の課題そのものを解決する仕組みは持っていません。この点を曖昧にはしたくありません。
InsideSparkが取り組んでいるのは測定の手前にある、もっと根本的な問題です。
「点の研修ではなく、線の伴走」という設計思想のもと、月1回の基礎研修・毎日のAIコーチング・毎日の日報・月1回のグロース・ガイド面談・月1回の上司報告会を繋げ、学びが行動として持続する構造そのものを作っています。
研修転移の定義(役立てられ、かつ持続される)を、理論としてではなく、日々の仕組みとして体現する設計です。プログラムの詳細はこちらでご覧いただけます。
効果の見え方についても、正直にお伝えしています。「何をもって効果が出たと考えればいいか」という質問に対し、僕たちは「数字の前に、まず行動が変わります」とお答えしています。
『指示待ちだった部下からの提案が増える』『報告の質が変わる』『問題を自分ごとで拾うようになる』。これらは毎月の上司報告会という場で、上司自身が定点で確認できる変化です。経営指標との因果関係を証明するものではありませんが、行動観察のための材料は、仕組みの中に自然と組み込まれています。
測定に悩む前に、そもそも転移が起きる構造を作ってしまう方が、近道かもしれません。
この記事のFAQ
単発の研修をすべてやめるべきですか?
やめる必要はありません。単発の研修にも、知識のインプットという価値はあります。問題は、その後に何もつながらないことです。研修の前後に、現場での実践・振り返り・上司への共有という接続を追加するだけでも、転移の起きやすさは変わります。
InsideSparkでは、研修転移をどう確認しますか?
毎月の上司報告会が、そのための場です。指示待ちだった部下からの提案が増える、報告の質が変わる、問題を自分ごとで拾うようになる。こうした行動の変化を、上司自身が毎月、定点で確認します。1年間の伴走の中で、単発の研修では見えない変化の積み重ねを追えるのが特徴です。
まとめ
・研修転移とは、学びが現場で一般化され、かつ持続されること。「良い研修だった」という満足度だけでは測れない
・多くの企業が満足度評価で止まるのは、行動・成果レベルの測定が構造的に難しいため
・転移が起きない根本原因は、研修と研修をつなぐ仕組みがないという構造的な欠落
単発の「点」の研修ではなく、継続する「線」の伴走が、転移を生む
・InsideSparkは効果測定ツールではなく、転移が起きる構造そのものを作るプログラム
「あの研修、結局何だったんだろう」を繰り返さないために、次の研修を計画する前に、一度「点」と「線」のどちらに投資しているか、点検してみることをおすすめします。自社の場合はどうなのか、無料の個別相談会でお話を伺います。
出典
・中原淳『研修転移の理論と実践』(ダイヤモンド社)
・株式会社FCE「人材育成に関する調査」(2024年10月)
・UMUジャパン「研修の効果測定に関する実態調査」(2022年11月)



